金融庁が主催する国際的なイベント「Japan Fintech Week 2026」。このイベントと連携した、非常に挑戦的なコンペティションが開催されます。
テーマは、地域金融機関における取引先支援の高度化です。
これまでのデータ分析コンペとは一線を画し、生成AIを単なるツールではなく「バディ(相棒)」として捉え、建設業界の実課題に挑むという実践的な内容になっています。
本記事では、コンペの核心部分である「評価基準」を深掘りし、金融・建設の実務視点から、具体的にどのデータを参照し、どう攻略すべきかのアプローチを整理しました。

評価基準に対する対策(データソース活用)
本コンペの勝敗を分けるのは、配布された評価視点をいかに深く解釈し、客観的なデータで裏付けられた指示(プロンプト)をAIに出せるかです。
事務局から提示されている6つの評価視点ごとに、参照すべきデータソースと具体的な対策を見ていきましょう。
1. 全体構成:過去と未来をつなぐ
評価視点: 過去分析と未来提案の接続
評価項目: 過去3年の財務・事業分析と、未来への成長戦略が一貫した因果関係で論理的に接続されているか。
【対策アプローチ与信管理とベンチマーク】
最も避けるべきは、現状分析と提案内容のチリグハグさです。
例えば、利益率が悪いのが原因なのに、売上拡大ばかりを提案しても症状は改善しません。
まずはAIに「デュポン分析」などのフレームワークを使わせ、ROE(自己資本利益率)が悪化している原因が、「儲ける力(収益性)」が低いのか、「資産を使う効率(効率性)」が悪いのかを分解させましょう。
「どこが悪いか」を特定してから対策を打つことで、説得力のある提案になります。
その際、対象企業の数値だけを見るのではなく、同規模の同業他社と比較することが重要です。中小企業庁が公開している実態調査などの統計データと比較させ、客観的な「弱点」を抽出してみましょう。
- 参照すべきデータ:中小企業実態基本調査(中小企業庁)
- 建設業の売上高利益率や労働生産性の平均値を確認し、ベンチマークとして利用します。
2. 地域性:その街ならではの解像度
評価視点: 地域特性の考慮
評価項目: 企業の所在地(商圏、人口動態、行政施策)を踏まえ、画一的ではない地域密着型の提案ができているか。
【対策アプローチ:オープンデータの注入】
建設業は究極の「地産地消」ビジネスです。北海道と沖縄、都市部と過疎地では、求められる工事も経営課題も全く異なります。
ここでは、国が提供する「RESAS」などの地域経済分析システムを活用するのが定石です。対象企業の商圏における人口推移や産業構造をAIにインプットさせてください。また、各自治体が公表している「総合計画」を参照し、今後その地域で予定されている公共事業や重点施策(防災、インフラ更新など)に絡めた提案を行うと評価が高まります。
- 参照すべきデータ:RESAS 地域経済分析システム
- 地域ごとの産業構造や人口動態を可視化できます。
- 参照すべきデータ:e-Stat 政府統計の総合窓口
- より詳細な地域の統計データが必要な場合に活用します。
3. 業界特性:商流による戦い方の違い
評価視点: 販路・商流の理解
評価項目: 官公庁/民間、元請/下請などの販路特性を把握し、それに応じた具体的な分析・提案となっているか。
【対策アプローチ:経審と入札制度の理解】
公共工事が主体であれば、「経営事項審査(経審)」の評点(P点)アップが受注への生命線となります。一方で民間が主体であれば、提案力やデザイン力が問われます。
まずは配布データから企業の立ち位置を分類させましょう。公共主体であれば、国土交通省のサイトで経審の仕組みを理解し、どの項目(財務健全性や技術職員数など)を改善すればランクアップできるかをシミュレーションさせることが有効です。
- 参照すべきデータ:経営事項審査(国土交通省)
- 公共工事の入札参加資格を得るための審査基準が詳述されています。
4. 業界課題:具体的な技術トレンドへの投資
評価視点: 近未来への対応 (GX/DX)
評価項目: 低コスト工法、環境技術(GX)、省力化技術(DX)など、技術トレンドへの投資や対応策を提案できているか。
【対策アプローチ:NETISの活用】
単に「DXを推進しましょう」という曖昧な提案では響きません。
建設業界には「i-Construction」という言葉がある通り、ドローン測量やBIM/CIM、遠隔施工といった具体的な技術が存在します。
ここで活用したいのが、国土交通省が運用する新技術情報提供システム「NETIS」です。ここにある具体的な新技術をAIに学習させ、「この企業の規模と工種なら、この技術を導入することでこれだけのコスト削減が見込める」といった、具体的かつ専門的な提案を作成しましょう。
- 参照すべきデータ:NETIS 新技術情報提供システム
- 国交省が整備する、建設新技術のデータベース。ここから具体的な技術名を探せます。
- 参照すべきデータ:i-Constructionの推進(国土交通省)
- 建設DXの最新トレンドや施策がまとまっています。
5. 業界課題:2024年問題と人手不足
評価視点: 需要減退・人材不足対応
評価項目: 工事需要の変化や深刻な人手不足(2024年問題、外国人材受入等)に対し、実効性のある解決策(歩掛管理の高度化、採用・定着策等)を示せているか。
【対策アプローチ:制度の正確な理解】
建設業において、人の数は売上の上限に直結します。特に「2024年問題(時間外労働の上限規制)」への対応は必須です。
厚生労働省の特設サイトで規制の詳細を確認し、違反リスクを洗い出しましょう。また、人手不足解消の切り札として「特定技能外国人」の受け入れを提案する場合は、出入国在留管理庁の資料を参照し、受け入れ可能な職種や手続きのロードマップを提示すると説得力が増します。
- 参照すべきデータ:適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト(厚生労働省)
- いわゆる「2024年問題」のルール詳細です。
- 参照すべきデータ:特定技能制度(出入国在留管理庁)
- 建設分野での外国人材受け入れに関する最新情報はこちら。
6. AI活用:相棒としての創造性
評価視点: AI活用(最終選考のみ)
評価項目: 生成AIの特性を理解し、独自の視点や創造的なアプローチ(プロンプトの工夫等)により提案書の品質を高めているか。
【対策アプローチ:ガイドライン準拠と創造性】
最後に問われるのは、AIの使い方そのものです。
AIに「金融コンサルタント」「建設業界のアナリスト」「地元商工会議所の担当者」など、複数の役割を与えて議論させるような工夫を取り入れてみましょう。
また、生成AIの利用にあたっては、日本ディープラーニング協会(JDLA)等のガイドラインを参考に、ハルシネーション(誤情報)への対策や著作権への配慮ができていることを検証レポートで示すことも重要です。
- 参照すべきデータ:生成AIの利用ガイドライン(日本ディープラーニング協会)
- AI活用の倫理やガイドラインの参考に。
まとめ:金融と建設のプロとして挑む
このコンペは、データ分析のスキルを試す場であると同時に、コンサルタントとしての提案力、そしてドメインエキスパートとしての業界理解が問われるイベントです。
上記のような公的データをAI(RAG等)に読み込ませ、事実に基づいた提案書を作成することで、他の参加者と圧倒的な差をつけることができるはずです。
Japan Fintech Weekでの登壇を目指して、ぜひ挑戦してみましょう。

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